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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
ビレラはこの形勢を見て飯盛の地に赴き、多数の人に洗礼を授け、相当な会堂をそこに建設した。これを書いているのは一五六四年の七月で、また新らしく飯盛附近の岡山から招かれ、そこへ行って会堂の如きものを設けようと心づもりしていた時である。従って前の暑熱の頃がこの年の夏でないことは明かだといわねばならぬ。して見るとビレラは、ロレンソの第一回の飯盛布教をも一五六四年のこととして記述するほどに、記憶が曖昧なのである。しかしこれはこの一年間に起ったことがあまりに多かったということの証拠であろう。飯盛附近の砂や三箇はこの間に信者の大きい群を持つようになった。砂は結城山城守の子の左衛門尉がいたところ、三箇は伯耆守の居城で、当時は河に囲まれた中島であった。右にあげた岡山は結城山城守の甥の弥平次がいたところで、ここもやがて信者の村になった。これらの場所は、京都と堺との間の有力な根拠地として、この後大きい役目をつとめるようになる。
この新らしい形勢を作り出したおもな役者は、片眼の僅かに見えるびっこのロレンソであった。がロレンソが如何にその琵琶法師としての話術を巧みに使ったとしても、こうして急激に武士たちの間に改宗の機運が起ったことには、何か別のわけがあったであろう。