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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
松浦侯に対しても、会堂へ招待したりなどして、いろいろと働きかけた。附近の島々では、著しく教勢を拡めることが出来た。そういう形勢から考えて、平戸の領主は、一五六五年度のポルトガル船も勿論平戸へ入港すると考えていたに相違ない。しかるにその一五六五年の七月ごろ、司令官ドン・ジョアン・ペレイラの乗った商船が横瀬浦について平戸へ連絡したとき、平戸にいた神父コスタは、ペレイラの平戸入港を止め、新しい港福田に廻航させたのである。その理由は、松浦侯の嗣子がキリシタンの少年の持っていた錫のキリスト像を涜したことに対し、松浦侯が謝罪の約束をしながら、それを履行しなかった、ということである。キリシタンが仏像の破壊を大仕掛けにやっていることに比べれば、この少年の仕業は、松浦侯の眼には一小些事に映ったであろう。従ってこの事を口実としてポルトガル船が平戸入港をやめるとは予期していなかったであろう。しかし神父たちは既にキリシタンとなった大村純忠を支持するために、ただ貿易のための方便として渋々布教を許しているような平戸の領主から、貿易の利を取上げるという方針を確定していたのである。