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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
この時にもオルガンチノは、新来のフランシスコや日本人ロレンソ、コスモなどを伴って、妙覚寺に宿っていた信長を訪ねた。当時、大勢の有力な武士や公家が面会に来ていたが、信長は誰にも会おうとせず、ただ「貧しい二人の外国人」と、ロレンソやコスモだけを居間に呼び入れ、一時間ほど雑談した。当時フロイスは病気がちで、この日も同伴しなかったのであるが、信長は早速彼のことを尋ねた。フロイスが豊後に行くと聞いたが、ロレンソも一緒に行くのか、という問であった。ついで新来のフランシスコの名や、生国を聞いた。話はそういう些末なことであったが、しかし信長の宣教師に対するこの特別扱いは、集まっている人々を驚愕させずにはいなかった。宣教師たちが帰ったあとで、彼はまたいつものように仏教を罵り、キリスト教を讃めたという。そういうところから、信長にはキリシタンになろうとする意志がある、という臆測も生じて来たのである。そうしてまたそれは、宣教師たちが実際希望していたところであった。
この臆測は、信長の大坂本願寺に対する猛烈な敵意と無関係ではあるまい。信長が紀州の一向一揆を目ざして京都を出発したとき、宣教師たちも教会の附近で彼の通過を見物したらしいのであるが、その時の信長の顔つきは非常に暗く、人に恐怖を抱かせるようなところがあった。