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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
宗論をやるか、やらぬか、一つを答えよ、というのである。法華僧たちはそれに答えることを拒んだ。自分たちは命令によって出向いて来たのであって、宗論をするとかしないとかは自分たちの方からは云えぬ。するもしないもただ命令に従う、というのである。して見ると、法華宗徒があくまでも宗論を主張したというのは嘘である。負けた場合に寺を破却されてもよいという書附も差出さなかったのである。宗論は信長の命令によって行われた。
当日の討論においても、法華宗が負けたというのは信長の細工である。因果居士の批判によると、討論の成績では浄土宗の方が悪かった。それを浄土宗の勝にしたのは、信長の意を受けた因果居士の仕業である。それを因果居士自身が告白している。
して見ると安土宗論は、法華宗に打撃を与えようという信長の意図の下に仕組まれた狂言であって、公平な宗論ではなかった、ということになる。或はそうであったかも知れない。しかし京都の学僧たちが宗論を発起したのでないということは、法華宗がこの争いをひき起したのでないということの証明にはならないのである。安土の法華宗徒が、先ず浄土宗徒に対して攻勢に出た。