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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

中でも夫人に洗礼を授けて貰いたいことを熱心に希望した。夫人自身も直接フロイスに頼んだ。しかしフロイスは、信仰がまだ十分でないと見て、中々承知しなかった。結局義統はフロイスの勧めに従って城内に小さい礼拝堂を建て、その落成の時に夫人が洗礼を受けるということになった。

当時の義統の陣営は、臼杵の西南の野津の町にあったが、そこでも急激にキリシタンが出来始めた。野津の領主レアンとその妻のマリアは、このとき日本人イルマンの説教を聞いて改宗した人たちであるが、日本で最もよいキリシタンとなった。その一族郎党二百人も、共に改宗した。

日向では宗麟が会堂や宣教師館の建築を始めさせた。建築場には仮会堂が出来ていたが、そこへ宗麟は、十一月の朝寒の中を、毎日遠くからやって来た。日向にキリスト教を植えつけその香りがローマにまで達するということ、この新しい国をキリシタンやポルトガル人の法律によって治めるということ、それが彼には今にも出来そうに思えていた。

それにひきかえて臼杵では、精悍な元宗麟夫人がまた勢力をもり返して来た。彼女は義統夫人の母親を抱き込み、若い夫人の改宗を極力妨げようとした。