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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
ということ、「富と権勢と地位」とにおいて信長以上であることなどを彼らは報告するだけである。そのほかには――むしろこの方が重大なことであるが、――秀吉は信長ほどに他人の意見を容れる力がない、自分の意見を他の誰のよりも優れたものと考えている、などといわれる。或は、その傲慢と権力欲とが信長以上であるといわれる。そういう意見を書いているフロイスは、信長の死んだあとで信長の傲慢を手ひどく非難してもいるが、しかしそれまで信長と接触した永い間の報告には、かなり濃厚に信長の人柄に対する同情を見せていたのである。信長は信仰の要求を持たず、従って宣教師の要求する第一の資格を欠いてはいたが、しかし未知の世界に対する強い好奇心、視圏拡大の強い要求を持っていた。それは権力欲の充足によって静まり得るようなものではなかった。それをフロイスは感じていたのである。ところで秀吉には、そういう点がまるでなかった。これは甚大な相違だと云ってよいのである。
こういう相違をはっきり見せているのが、副管区長クエリヨの謁見の際の秀吉の態度だと云ってよい。クエリヨは一五八六年三月六日に神父四人イルマン三人を同伴して長崎を出発し、平戸、下の関を経由して東上した。