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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
十四世紀以来このカリカットは香料の貿易港として西岸第一となったが、その繁栄は主としてアラビアの商人と船とに負うている。西欧への輸出はアラビア商人の独占で、エヂプト経由、地中海諸港に運んだのである。でこのインドの港にもアラビア人の居留地が出来て居り、来住者は四千家族以上に達していたという。
このアラビア人のインド貿易の中心地へガマの艦隊が乗り込んで来たのであった。既に数世紀来イスラムは西方に於て絶えず反撃をうけ、最近には遂にヨーロッパに於ける最後の根拠地をさえ失ったのであるが、今やその反撃が在来平和であった東方の貿易圏にさえも及んで来たのである。アラビア人は非常な衝撃を受けざるを得なかった。従ってこの後のインド貿易の展開は、西欧に於ける古い対立を新しくインドの舞台に於て展開するという意義を持っているのである。
しかしガマが表面に於て求めたのは、海の君主、カリカット王との平和な通商関係であった。尤もその際ガマが幾分の恫喝を混えていたことは否定出来ぬ。彼が最初使者をして告げしめた来意にいう、我々は西洋最強のキリスト教国王が胡椒薬品等を買うために派遣した五十隻の大艦隊の一部である、暴風のために四散して我々のみがここに着いた、と。