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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

そうなれば、林羅山のような固陋な学者の思想が時代の指導精神として用いられる代りに、少なくともフランシス・ベーコンやグローティウスのような人々の思想を眼中に置いた学者の思想が、日本人の新しい創造を導いて行ったであろう。日本人はそれに堪え得る能力を持っていたのである。

ヤソ会の宣教師は、日本における仏教諸派の間の対立抗争が、キリスト教に対する仏教の防禦力を弱めていることを指摘した。が、そのことはやがて日本におけるキリスト教の伝道そのものの運命ともなったのであって、秀吉の宣教師追放の頃からの旧教諸派の間の対立抗争は著しいものであった。そこへ間もなく新教を奉ずるオランダ人や、ローマ教会を離脱したイギリス人たちが現われてくる。キリスト教を無制限に摂取しても、それがただ一つの運動に統一され、日本侵略の手段に用いられるなどということは、到底起り得なかったのである。この事情は少しく冷静に観察しさえすれば直ぐに解ることであった。それを為し得なかったのもまた為政者の精神的怯懦の故である。

ただこの一つの欠点の故に、ベーコンやデカルト以後の二百五十年の間、或はイギリスのピューリタンが新大陸へ渡って小さい植民地を経営し始めてからあの広い大陸を西へ西へと開拓して行って遂に太平洋岸に到達するまでの間、日本人は近世の動きから遮断され