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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁

青空文庫

「誰」

紙捻で耳をほっていた赤埴源蔵が、

「よせ、あの話は」

友達は、みな知ってることとみえて、同じようにくすくす笑った。

こんなふうに、時々、和やかにくずす謹厳な無聊さを、それでも、この部屋の若者たちは、隣室の方へ、気がねらしく、笑ってはすぐ憚るような眼をやるのだった。

ちょうど、下の間にはこの九人。

上の間に八人。

ふた組に分れていた。

その上の間の組には、大石内蔵助以下、老人が多く、きょうは料紙と硯を借りて、手紙を書いている者が多かった。いちばん年長の堀部弥兵衛、顔の怖い吉田忠左衛門、黙ったきりの間喜兵衛、そのほか原惣右衛門だの、間瀬久太夫だの、真四角に膝をならべて、読書か何かしていた。

内蔵助だけは、斜めに顔をあげて、いつもの深謀な眸も、今はもう何も思うことがないというように、ぼんやり、半眼にふさいでいた。書き物もせず、書も手にふれず、どっちかといえば小がらで肩のまろい体を、やっと、置くべき所へ置いたというような恰好で、居ずまいよく坐っていた。

十二月十六日――

人々は、手紙の封に書いている。

討入のおとといの夜は、もう過去だった。何だか、遠い過去の気がするのである。