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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁
二
白骨になれば、われらみな同魂同性。……だが、あの墓石に近づく身寄りの者とあれば、いわゆる怨みも重んで二重の遺恨をふくむ者と視ねばならぬ」
「…………」
「右門。気をつけろよ」
「……はい」
右門は慄然として、兄の諭誡に、首を垂れた。
と。その時、空地の遠方から、
「若様っ。十兵衛様。……捕まえました。捕まえて参りましたぞ」
と六助の遠い怒鳴り声が聞えて来た。
二
眼の前に引きすえられた彼女を見て、十兵衛は、意外らしい顔をした。その美貌と、身ごなしの可憐しさに、眼を瞠ったのである。
もう観念したものか、いつぞやの夜とちがって、十兵衛のいろいろな詰問に、お由利は、悪びれずに答えた。
「――決して、父親の身寄りのと、そんな縁故ではございませぬ。大機さまと私とは、あかの他人でございまする。ただ、一つ長屋に住んでいて、私の父が病死する折、お世話になった御恩があるので……柳生さまのお邸で、仕合に行って死んだと聞き、ふだんお酒が好きだった事など思い出し……お屋敷の往き帰りに、花でもあれば上げたり、時にはお酒など上げに来たまででございます」
可憐な小娘の顫き声には、何の邪推も起らなかった。