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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁

青空文庫

四

――由利という新参の小間使、もうおるまいが」

「いえ。おると思いますが」

「いや、おるまい。――じゃが念の為、何か他に異変はないか。邸の内、一応、静かに検めてみい」

四

橋袂の堤芽柳の糸が、ゆるい流れに届くほど垂れている。

柳の上に、月があった。水の瀬には、月影が落ちていた。春だが冴えた晩である。それだけに、物の陰は闇が濃かった。

恋と死神に憑かれたように、右門はここまでふらふらと来てしまった。「白魚ばし」と橋杭の文字を見た時、はっとした。

「由利、どこで……どこで死ぬのか」

「おやしきの追手が、気がかりでございます。もし捕まったら、あなた様もわたくしも……」

「恥だ。生きているよりも――」

「大川までは、逃げきれませぬ。いっそここで」

「深いだろうか」

ふたりは、水を覗いた。お由利はだまって、帯の間から、ふた包みの薬を出して、右門へその一つを分けた。

「……毒?」

右門の手はふるえた。お由利はにっと笑って、もう包を開いていた。そして、あっと思ううちに、嚥みくだしていた。

「さ。……右門様、御一緒に」

思慮にただしてみる遑もなく、右門もあわてて毒を嚥んだ。ふたりは抱き合って、橋袂の崖のふちに立った。