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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁
十三
弱気を出されるなよ」
切れ草鞋をぶら下げて、何処へ帰るのか、福原主水は夕闇へ去った。
与右衛門は見送って、
「そうか……あの主水が働きながら傍の百姓達に、説教していてくれたのだな、それで、今残っている人数だけは、黙々と仕事に就いていてくれるのだ。……主水、ありがたい」
涙をうかべながら、彼は、そこにまだ相手がいるように頭を下げた。
十三
ひどい暴風雨であった。二百十日も来ないうちに来たのだ。
小屋の屋根の石も飛びそうに思える。
「棟方っ、棟方どのっ、すぐ来いッ大変だ」
青田を見ないうちは来ないと云った福原主水の声なのだ。破れるように戸を叩く。
与右衛門も、お珠も、土砂降りの雨を衝いて、麓へ駈けて行った。
この暴風雨に乗じて、何物か悪戯した者があるらしい。最難工事としていた岩木川の上流の石垣がくずれ、続いて山崩れを招いていた。
「ウウム……」
手の下しようもないのである。泣きたいような皺の痙攣が瞬間、与右衛門の顔をかすめたが、すぐ、
「これくらいな事はあっていい。何事にも、も一歩という手前にはやってくる奴だ。よしっ――」
発狂したのではないかとお珠は父の動作にびっくりした。