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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁

青空文庫

二

「中を調べるなら、蓋をあけてお見せするで、待ってくらっせえ。槍などで樽に穴を空けられたら、味噌が腐えてしまうでねえか」

お松は、あわてて樽を開けた。そして味噌の中に手を深く突き入れて、茄子だの大根だのを掴み出し、

「もっと、出すべかよ」

ニコニコしながらいった。

役人達も笑った。

「よしっ」

検察済みの紙片が、ひらっと彼女の足もとに舞った――

二

雪が解けると、利根川は赤く濁り、水嵩も増して、幾日も浪は激していた。

「お父っさん、血ってえものは、洗っても洗っても、なかなか落ちねえもんらしいんだなあ」

潮来の出島に近い入江の深くに風を避け、真菰の中に繋綱っていた醤油船はもう四日もここに泊っていた。

お松は今、乾いた洗濯物をおろして、畳付けていたのである。磋磯之介の肌着と、小袖、そして袴だった。

行々子が高く啼いていた。権十の大漁着を借りて磋磯之介は、苫の蔭に丸ッこくうずくまっていた。

「お松さん、相すまないな」

彼がいうと、

「海後さんたら、そんなに何遍も礼ばかりいうて、おら、返辞がなくなるがな」

狭い船の中で、四日も暮しているうちに、お松はもう彼に馴ついて、友達あつかいにするのだった。