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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁
八
――この水はのむな
という高札を立ててある川と、
――この水はのめる
という立札の立っている川とがあった。それは勿論、与右衛門の字だった。
八
半島の東西の山岳地帯から集落して、この平野を縦走してる川は主な川だけでも十幾つかあった。それが各※(二の字点、1-2-22)、秩序なく、打つかる所でぶつかり、分れては幾条にもなり、水と石と高低の多い土地とが、噛みあい、奔激し合って、やや落着いている所はまた、身を没しるような茅の沼地というような原始的な姿だった。その水の自然性に、秩序を与えまた、狂暴性を取り除けようとする与右衛門の事業は、第一年から三年目の半ばまで、殆ど徒労であった。
だが、屈しない彼の頭脳は、こういう事に気づいた。
(おれは今日まで、断崖には石をたたみ、平地には堤を築き、水をこうやろうとすれば堰を固め、人間の力で水を虐め込もうとして来たが、これは拙劣だ。――だから水に勝ったと思うと、何百間の堤も、一夜の暴雨に蹴くずされ、仇をとられる事になってしまう。――これからは、水を自分が動かすと思わないで、水の性能に従ってみよう)
彼は、今までの基礎を捨て、根本から工事方針をそれから建て直してかかった。