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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁

青空文庫

菩提恋華

一

「又十郎」

と、振向いて、十兵衛はいった。

「死骸は、侍どもに取捨てさせればよい。ただその前に、この男の所持品、わけても書付などないか、其方自身も手伝うて、緻密に調べておく要があるぞ。――何かあったら、後でわしの部屋まで持って来い」

菩提恋華

一

仲秋はもう過ぎたが、夜ごと、月がよかった。ずいぶん開けて来たとは見えても、江戸城の周囲の大部分は、いまだ武蔵野の切れ切れが残っていた。夏は、りんどうや月見草、秋は、撩乱といっていいほど、空地の萩桔梗は露や花を持ち競う。

柳生家の裏も横も、そうした広い空地だった。月の下に、虫が啼く、鶉が啼く。――夜はそこの道をよぎる人影もない。

「おや。誰か往来の者でも、供えたのかな……?」

四人兄弟のうちのいちばん末、四男の柳生右門は、露の中に立って――そこだけ草が剥げて、土饅頭のように少し盛り上がっている地面へ、身を屈めながら呟いた。

石が一つ、置いてある。

その前に、香華が供えてなければ、野原の小さな起伏の一つとしか見えないが、前にも誰か、備前の小徳利に何か供えてあるし、右門も今、香華を持ってそこへ来て跼みこんだのである。