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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁

青空文庫

三

――といっても、それが冷蔑とか復讐とかいう表現ではちっともなかった。ただいつもの彼のままであるに過ぎないのである。

「何か、人違えでもしたのじゃないかな。わしは巡査の旗岡剛蔵という者でありますぞ。どれ、それじゃ三階へ行って、犯人を捕縛して来るとするか」

扉を押して、ずかずかと屋内へ入って行った。

彼の背が、ドアに隠れると同時に、爺やの訴えで、山手屯所の巡査の一隊が、ここへ殺到して、騒然と、家の周囲をとり巻いた。

「気をつけい、犯人はピストルを所持しとるというから」

「誰か、三階へ、もう上がって行ったのか」

「旗岡巡査が先に来ておったから、旗岡が上がって行ったろう」

「しばらく、様子を見ておれ」

「――裏口は、裏口は」

などと口だけで、騒めいているだけだった。

――すると、二階のガラス窓が開いた。急に家の周囲に人声が聞えたので、そこまで、上がって行った旗岡が、階段の窓から首を出して覗き下ろしたのである。

彼の首を仰ぐと、下の巡査たちは、

「や、旗岡君。気をつけろよ、犯人はピストルを持っとるというぞ、ピストルを」

旗岡は頷いた。

「――いるのか、犯人は」

「おるらしいです」