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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁
湖心の扇
一
「牢頭。――として置こう。よう訪ねてくれた。そちの性骨は、秀吉よく知っておる。雪隠へ連れ込んで殺すにもあたるまい。けれど、ここはもう帰れぬぞ。――京都と中国筋のあいだは、何人も通行さすなと、たった今手配をいいつけたばかりじゃ。……陣中なれど、遊んでゆけ」
返事をする間もない。
猿殿は、廻廊の彼方へ向い、
「おいよ、誰か来い」
と、呼んだ。
お旗本の衆が来てすぐひざまずいた。猿殿はわしの肩を、また、軍扇で気軽に叩いて、こういわれた。
「剽げた男じゃろ。こんなところへ訪ねて来おった。これはわたしと同じ村の生れでな、古馴染の男じゃ。どこぞへ置いて、劬ってやってくれ」
湖心の扇
一
秘密を知っているということは恐い。その秘密が大きいほど恐ろしさも大きい。
戦場は、遮断されている。その中で、敵も味方もまったく知らないことを、わし独りが知っているかと思うと、堪らない恐ろしさに時々襲われた。
わしより一足前に、飛報を持って京都から来たという密使は、それを知っているばかりに、役目を済ますとすぐ、雪隠で刺殺されたというではないか。
が、猿殿は、昔の誼みを思ってか、わしの根性を知ってくれてか、わしを殺さずに遊んでおれという。