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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁
「小瘡ができましてな。痒うてたまらぬ」
「それやお辛うござろう。なぜはやく仰っしゃらぬ。典医に申して、塗り薬をとって来て進ぜよう」
立ちかけると、
「伝右殿、伝右殿、おついでに、十郎左へも、一服お遣わし下されませ」
と、誰かいった。
「十郎左殿も?」
と見まわすと、この中では一番の年少者で眉目の清秀な磯貝十郎左衛門が少し、青白い顔して、片手で腹を抑えていた。
「御病気か」
「いいえ、少々ばかり」
十郎左は、首を振った。
そばの者が、
「尾籠でござるが、十郎左は、下痢気味なのでござる。両三日、我慢いたしておりますが、お手当を」
「なぜ、我慢などなさる。左様に、お親しみ下さらぬと、伝右めは、殿のお心持を、十分にお取次ができませぬ。役目の落度と申すもの。どうか、もっとお心易く、用事を仰せつけ下さらぬと困る」
「これから、気をつけまする」
叱られたように、十郎左が、真顔で謝ったので、側の者も、伝右衛門も笑った。十郎左は、顔を赧らめて、少年みたいにもじもじした。
朝夕、世話をしているせいか、伝右衛門は、今ではまったく、この人々を、他人とは思えなくなっていた。とりわけ、この磯貝十郎左衛門には、一番年少者であるせいか、自分の子みたいな愛着があった。