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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁

青空文庫

「見つけたらすぐ、山手警察屯所の出張室へ知らせるように」

と、田辺刑事からいい渡されて、毎日歩いている旗岡巡査にも、一体、何しに来ているのか分らない気がして来た。

けれど、旗岡は、それに飽きもしなかった。飽きない理由は、初めから少しも功名心だとか、競争心だとか、そんな興奮は持たないからであった。

他県の刑事が出張して来たとなると、俄然山手屯所の巡査や探偵たちは、眼いろを変えて、それに熱した。当然、田辺剣三郎刑事も、挑戦されたような感じで、たった一人の味方である旗岡巡査を励まして、

「もし吾輩ら二人の手で、犯人をあげたら、足下にも、十分の賞典があるように、屯所へ報告するからな」

と鞭撻した。

「はあ、はあ」

服従はしているに違いない返辞だが、旗岡巡査の顔には、ちっとも感激も興奮もわいて見えて来ないのである。

「つまらない奴を付けてよこしたものだ」

と田辺は結城警察屯所の人選を恨んだ。

「およそ、どこの屯所にも、鈍物はいるが、あんなのは、見たこともない。何を話し合ってみても、曖昧な生返辞ばかりしているし、酒を飲み合っても、あの通りだ。昔ばなし一つした例しがない。