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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁

青空文庫

もっとも、町人でも三代目という。徳川が今その三代将軍の世だ。しかも秀忠の死後、家光が将軍職を受けついでから、まだ年月は浅かった。

幕府三代、武家の覇業としたら、もうこの辺でぐらついていい所である。諸国の雄藩も、決して現状に甘んじてはいない。まして、もういちと大乱あらば――と雲をのぞんでいる長刀の武夫は、山野に数かぎりなくあるし、一藩のうちにも、沢山ある。――泰平と見える世情の裏に、ただそれらの人々が時を計って、沈黙を守っているだけに過ぎない平和なのである。

不安は、一般ばかりでなく、幕府自体が抱いていた。いや幕府自身からそれを醸しているくらいなのである。例えば、閣老の土井利勝は、自身、謀首となったような顔して、列藩の諸侯へ、謀叛状を送り、その手応えで、諸侯の肚を打診したという――奇怪なうわささえ巷間に洩れていた。

間もなく、大名の妻子は、国元に置くべからず――という令を発して、その骨肉を江戸へ持った。

また、参覲交代の制度を厳密にした。また、安宅丸その他の巨きな兵船を造らせた。また、武家法度をやかましく宣布した。また――大目付の職制を新たに設け、諸国に無数の隠密を放った。