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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁
二
これでは、大名たちも、神経質にならずにいられない。諸藩の動揺や自粛は、すぐ庶民に反映した。その上、福島、加藤などの大藩の没落、大納言の自滅――。
無数の浪人がそこにできた。禄を離れ、主家を離れ、到る所で、
(乱になれ、乱になれ)
と、反幕的なものを醸し歩いた。
殊に、柳生家の白壁の塀には、
俗剣佞智流
だとか、
剣ヲ穢ス剣家
禄ヲ糞城ニ積ム
だとか。また、
幇間流のお家元
強い敵にはお止流
などと落書したり、
衆怨集財
と呪ったり、そのほか辛辣な悪口や呪咀が、消しても消しても、何者かが書きちらして行った。もちろんその筆蹟や辞句から見ても、町人の悪戯でないことは明白だった。
二
但馬守宗矩は、毎夜、疲れて帰った。
もう彼も六十余歳である。――でなくても今の難局に、大目付を四年も勤めれば、心労だけでも、疲れるほうが当然であった。
松の内は松の内で――それが過ぎるとまた政務で、明るいうちに邸へ帰ったことはない。
「お帰りなさいませ」
「お帰り遊ばしませ」
出迎える家人達の間を通って行くにも、頷くだけで、自然口が重くなる。――黙って、奥の――息子達の部屋よりもう一棟奥の、居間に坐る。