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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁

青空文庫

くらやみの太陽

一

また彼が海外の王へ書翰していったように彼自身が、

――われは太陽の子たり

と、かたく信じていたものならば、なおさらのこと、その無限大の微笑光をもって、かかる文業も世の草々の一穂と眺めやるに過ぎまい。

つい「はしがき」が長くなったが。

以下、開運日輪抄の中のはなしを、柾木孫平治氏の口述体を取って、しかし文章はわたくしのものに直し、意訳的にぼつぼつ書いて行ってみる。描写その他に、私の想像の繊維も横糸にはいっていることはいわずもがなである。賢明な読者は、疾く諒として下されているものと思う。

くらやみの太陽

一

美濃の稲葉山の牢に、わしの悪業の終りは来ていた。

天文二十二年のこと。

柾木孫平治という名も、もう何日、この世から拭き消されるかと、観念の日を送りながら、

「柾木孫平治よ。柾木孫平治よ」

わしは自分の名を、日に何十遍も、心のうちで、念仏がわりに称んでいた。

だが、未練といっては、それくらいなもので、もう図太く観念はしていた。やりたいことはやり尽したし、親もないし、妻子もないし。

その日はちょうど、わしがこの牢獄へ坐ってから、四百八十七日目だった。

牢獄の中では、一と月とか半年とかいういい方はしない。