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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁

青空文庫

学問と修心とで、その天性を、悪いと自覚して抑えているだけに、そうした時のお顔色は、酒に弱い者が悪酔した時のように青かった。

だが、わしが、

「藤孝様がお越しになられました」

と、取次ぐと、そんな折でも、

「おう。渡らせられたか」

と、いちどに愁いも払われて、御自身、ずかずかと、式台まで出て、

「ようこそ」

と、別人のように晴々と、お迎えになるのが常だった。

お二人は実に話がよく合うとみえて、時の移るのも忘れている。その話がまた、実に多方面で該博なのに驚かされる。藤孝殿はいつも口癖に、

「どうしてこんな文化の低い地方に、貴方のような都にも稀なる知識人がいるのか」

と、よくいわれた。

わけて国学についての話題がよく出た。細川殿は和歌の道に造詣が深かった。美術、文学、天文、兵学、そして時事を談じ、一転して、食味のはなしや、笛、蹴鞠の事、流行の連歌の評やら――殆ど尽くるを知らなかった。

「時に、……今日は」

と、その日に限って、細川殿はあまり弾まず、声を密めて、何か折入っての相談があるらしかったが、侍坐しているわしを憚られて、ちょっと、口を閉じた。

すると御主人は、わしへちらと目をくれた。