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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁
三
――又十郎は心のうちで、兄がこの無益な仕合を敢えて自分にさせたのは、意地悪な無言の折檻を自分に加えているのだ――と、ひそかに僻んだ。怨めしくさえ思った。
押して来る敵の圧力で、来るな、という感じがした。とたんに、かんと彼の木剣は敵の刀を受けていた。離さなかった。手は痺れて何の知覚もなくなっていたが、だだだと、ふた足三足、床を踏み鳴らしたまま、えおっと、喚いて撃ち返した。
――不覚であった。
大機はかるく外し、又十郎は殆ど足の裏を相手に見せる程、前へのめって、そのまま板壁まで行くかと見えた。
「坊ンち。見えたか」
大機は笑った。――が、その瞬間に、差し変えた影絵の人形のように、彼の前にはべつな人物が木剣を提げて立っていた。
三
「……や?」
大機は、身を退いた。
又十郎とは何処も似ていない片目の男である。三十そこそこの年齢らしいが、老成ぶった顔をして――つぶれている左眼の陰影がよけいそう見せるのかも知れないが――どこか哲人じみた風のある男で、背はむしろ又十郎より低いぐらい。色は黒く、骨ぐみはずっと太い。
「――当家の長男十兵衛三厳でござる。舎弟ではちと、お手甘い御様子。