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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁

青空文庫

そう、謙遜せんでもよいわ。何か、祝おう」

と、いった。

彦太は、空しい気持で帰った。入家の日どりや支度が、伯父夫婦の手ですすめられた。彦太は、帳場から往来を見ながら爪を噛んだ。

「俺の生きる所は、娘付きの御家人の屋敷でもなし、江戸でもなし、他にあるぞ」

じっと、うごく地面を見た。緋ぢりめん、福草履、八幡黒の鼻緒、物乞いの黒い足――野良犬、野良犬。――絶えまなく、雑多な人間の脚は時を織っている。

「まちがいはない、この人間達の脚を、一度、焼ッ原から、出直させるこった」

彦太は、信念の唇を噛んだ。

「俺の体を、役立てる仕事は、千曲川のお刑置場へ坐るほかに、慥に、もっとしていい事があった。――七十両は、どうせ今に、路頭に迷う父娘へ涙金をくれたと思え」

入家の日が来た。

彦太は、聟殿だった。

派手ッぱりな伯父夫婦は、その一夜のために、神田祭りみたいな金づかいをした。割下水の笹本隠居を初め、社中の祝い物は、根太も土台も腐りかけている古い御家人屋敷へ、積みこまれた。師の伊能矢柄や、同門からも、柳樽が届いた。

「めでたい」

と、みんないった。

娘付きで、祖先からの士格を売った老御家人も、