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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁
だが、塀が高いので、邸のうちからは、裏の空地は見えなかった。
右門は、日が暮れると、書庫の上にある中二階の小部屋へ上がっていた。そこから原が見える。月の夜は、冷たいあの石が、露にぬれて土饅頭の辺りも見える。
そして、
「――今夜は」
と、夜ごと、人待ち顔を、そこに更かしていた。
女は、あれから後も二、三度、石へ詣りに来た。
その都度、右門はすぐ、裏門から空地へ出て行ったが、彼が土饅頭の側まで行くと、もう女の影は、どこにも見えなかった。芒の陰にも、あれからは隠れていなかった。
(名だけでも、なぜ聞いて置かなかったか)
軽い悔いの下に、何か強い執着が首を擡げていた。それはあれ以来冷めない火のように、彼を絶えず焦だたせていた。
中庭の芭蕉に、黄色い灯影が流れた。がらりと、障子を明けて、濡れ縁に人影が立った。十兵衛三厳である。障子の隙間から、兵書や禅書を散らした机が見える。
「こよいもいい月だな。もう後の月か」
独り呟いていた十兵衛は、向う側の窓を見て、
「又十郎、又十郎」
と、呼んでみた。
燈りは灯いているが、返辞はない。十兵衛は舌打ちならして、
「蝙蝠は、また留守か。