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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁

青空文庫

「なんというて」

「御主人様には、この度は、赤穂浪士の接伴役とかにおなり遊ばして、まことに、お羨ましゅうございますと……」

「ふむ」

伝右衛門は、硬ばった顔を解いて、初めて、いつもの笑みをたたえた。

「代りを」

と、飯茶碗をだして、

「ははは。わしの役目を、羨ましいとか」

「刀屋ばかりではございません。呉服屋の番頭も、花道の師匠様も、出入りの八百屋までが、義士たちのためになら、どんなことでも尽したい。身代りになっても上げたい。――それの出来る御主人様は、お羨ましいと申すのでございます」

「至誠は人をうつ。……そんなかのう」

「その代り、うるさいことも訊かれて困ります。大石内蔵助様は、どんな顔だの、堀部様はどうだの」

「ははは。見たいのじゃな」

「いちばん困るのは、お処刑は、どう決まるであろうと、私に訊いたら分るかとでも思うて、探るのでございます」

「何事も、知らぬというておけ」

「でも世間の衆は、よると触ると、どう裁くか、わが身のことのように案じているので、時には、側で聞いていても、涙がこぼれることもございます。……ほんとにお父様、どう決罪るのでしょう」

「わからぬ」

「遠島ぐらいでございましょうか」