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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁
「――内蔵助殿、お仕舞いなされました。吉田忠左衛門殿おいでなされ」
庭で、役人がよんだ。
それから、順々に最後の大石瀬左衛門の切腹が終ったのは、もう夕方――庭は屏風と幕だけが、暮れ残っていた。
伝右衛門は、もう、自分が悪鬼か人間か分らなくなっていた。人々の遺品や、脱いだ物を、各※(二の字点、1-2-22)、札をつけ、番号をつけて、空虚な部屋の隅に、積みかさねていた。
と――覚えのある十郎左の衣服があった。きちんと、畳みつけてある。古い帯、古い持物、すべてが、几帳面に。
「……若かったなあ」
ひたと、横顔を押しつけた。若い十郎左の温みがまだあるような気がした。すると、その間から何か落ちた。
「? ……」
見ると、濃い紫の縮緬の小布だった。ふく紗にしては、耳縫いがないのである。何かつつんであるので、開けて見ると、何と、琴の爪が一つ。
琴の爪?
あの美貌で剛気な武士のこれが死期までの品だろうか。伝右衛門はひょっと、そぐわない気がしたが、二日の晩の彼を思いだして、
「さては……。吉良殿のお寝間とは……」
読めたのである。
もう一人、彼は、べつな最期を見送る責任を感じた。