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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁
――分らないといえば、馴染みになっても、いまだに分らない問題に度々ぶつかる。
つい昨日も。
櫓下の大隅屋へ商いに行って、茶ばなしに聞いていた話なのであるが――
其家へよく来るお客で、綽名を「黒さん」とも「能の面」ともいわれているお客がある。金切れもわるいし、御面相は綽名のとおりだしするのだ。
(また、能の面の口だとさ)
と聞くと、何家の妓も逃げを張って、花代に依らず、座敷へ出てがない。
すると、お鷹という妓が、
(わちきが、いいお客にしてみせよう)
と云って好んで出たが、同時に、べつな家のお蝶という妓も、
(そんなに持てないお客なら、わたしが持てるお客にしてみせる)
と、自分から進んで座敷へ買って出た。
四、五たび両妓がぶつかるうちに、当然、黒さんを挟んで張りッこになった。お鷹は、お蝶に情夫があるのを知っていたので、
(おまえの心意気か知らないが、そんなおせっ介に出なさんして、忠さんによいのかえ)
痛いところを、黒さんの前で素ッぱ抜いた。
するとすぐお蝶は、恋人を呼びにやって、黒さんの眼の前で、無理に切れてしまったというのである。
――清吉には、どう考えても、そんな妓の心理がわからないのであった。