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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁

青空文庫

わたしの家でちらと見かけたのが、おまえさんの落目の機ッかけになったなんて、生涯云われるのは寝ざめがわるいからね」

「御親切に、有難うございます」

「こんな事になるなら、早く打明けておけばよかったけれど、まさか、おまえさんがそんな甘納豆みたいな人とも思わなかったから……」

「あはははは、これあ御挨拶でございますね。清吉も、女にゃ甘いに違いございませんが、これでも色街の事には、年期を入れておりますから、満更、溝へ金を捨てるようなヘマはしていないつもりでございます」

「オヤ、そうなのかえ。わたしゃあまた、半年も一年も、旅の空で稼ぎ溜めたお金をと思って、余計な心配をしたわけだが……」

「いいえ、この清吉だって、初手からそれくらいな事は、感づいていないわけじゃなかったんで」

「へ。知っていたのかえ」

「あの女の心意気に――ええ、百五十両くれてやりました」

「心意気に?」

擽ったそうに、通船楼のおかみさんは笑った。闇の中でも鉄漿は光った。

「……成程、心意気かえ。……じゃあ他人から何もおせッかいは要らない事。おまえさんも、二、三年辰巳へ商いに来たおかげで、たいそう深川の水に滲みた通人におなりだね。