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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁

青空文庫

「どうして」

「少し……その、このごろ、お米のお入用が違うんですが」

「そういえば、何だか、以前よりもよけいに、あのお家でおまえにも会うね」

「そうなんです。――ここ四、五年もずっと、幾日目には一斗と、ちゃんとお入用が極っていたのに、近ごろはそれが早く失くなって、まだあるはずだと思っていると、いつも御催促をうけますんでね」

「……?」

お那珂は、ふいに足を止めた。その足の先に、妖しい光を帯びた毛虫が二、三匹うごいている。提燈の明りに揺らいで見える彼女の顔いろは、葉桜の青葉のように変っていて、呼吸もしていないかのように見えた。

「……変ですぜ」

穀屋の若い者は、そうつけ加えたが、ひょいと、お那珂の顔を見て、

「いいえ、べつに手前どもじゃ、多く取っていただいた方が、有難いんですがね。へへへへへ」

と、笑いに紛らせた。

町に近づくと、穀屋は、お先にといって急いで行ってしまった。お那珂は、急にぽろぽろ涙をながして、

「ひどい!」

と、呟いた。

「――そうだ、きっと磋磯之介さんは、社家の奥に、隠れているにちがいないのだ。桜田からも逃げたという世間の噂。……わたしに会ったら、世間に知れるか、密告でもするかと思って」