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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁

青空文庫

無用な敵対は思い止まって、姉妹尼にでもなって亡き家来の回向でもしてやったがよい)

と、鋭い眼の裡にも、優しみをこめて、懇々と諭した。

又十郎は、兄のことばが、初めは解せなかったが、だんだんと説き明かされて、悪夢のさめたように覚った。

お駒とお由利は、由緒ある大家の息女だった。ここ数年間に、取潰された犠牲大名のうちの一家、加藤忠広の家老加藤淡路守の遺子で――先に死んだ綾部大機は、忠義無類なその家来であった。

姉妹と大機は、主家の没落後、江戸へ流れて来て、大目付柳生家を、ふかく怨みに思っているところから、その報復を、永いあいだ心がけていたものだった。

そしてお駒は、湯女奉公しているうちに、又十郎から柳生家の内状をそれとなく探り、大機――お由利――と順々に手段をかえて、但馬守の生命から、十兵衛、又十郎、右門、とすべての者の血脈を断って怨みを雪ごうと企てたものである。

(わしは、ほぼ察していた。だが、この姉妹や大機のうしろには、もっと無数の天下の敵が潜んでおる。その糸の繋がりを見るまではと知らぬ顔してながめていたのだ。おそらくお父上もはやお悟りと思う。――又十郎、もう湯女修行は切上げて、ここらで父上の大愛に、お酬いせねばなるまいが。