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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《柳生月影抄 名作短編集(二)(やぎゅうつきかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 173,309 字 · 352 頁

青空文庫

弁政は、女房のお村に、

「どうだ、あいつ、思いとまる風はないか」

時々、訊ねた。

「思いとまるどころですか、伊能先生の道場へ通って、この頃は、まるで侍気取り、弁政には、浪人が帳場をしてるって人がいってるくらいですよ」

「しようがねえな」と、苦笑した。

しかし、弁政は、甥のそうした熱心さが、可愛くもあった。

「何とか、してやらなければなるまい」

「御家人株でも買っておやんなさいな。侍の株は、この頃、値も下落っているし、売りたい方は、ザラだって事ですよ。何でも、二本差せさえすれば、本人も気が済むんでしょうから」

「心当りへ、頼んではあるのだが」

「割下水の御隠居などは」

「笹本様なら、顔はひろい」

「きょう、さらいの撒札が来てるんですよ。彦さん連れて、行ってみましょうか」

「あんな、がさつ者を連れて行ったら、御連中が、眉をひそめやしねえか」

「いつまで、あの人も、田舎者じゃありませんよ。私に任しておいて御覧なさい」

伯父によばれて、彦太は、畏まった。

「何か、御用ですか」

「お村と一緒に、お旗本笹本金十郎様のお屋敷へゆくのだ。稽古着など、下に着てねえで、きちんと支度をしろ。