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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《源頼朝(みなもとよりとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 306,118 字 · 613 頁

青空文庫

「…………」

頼朝もまた、無言だった。

無理はない。宗清以外の者の跫音が来れば、自分を殺しに来た人ではないかと思うに違いないのである。

ややあって。

自分に害を加えに来た者でない事が分ったらしく、頼朝はだまって、重盛のすがたへ、頭を下げた。

それに対って、重盛も慇懃にかしらを下げ、そして初めて、宗清の方へ云った。

「夜の具は、お寒うないようにしてあるか」

「はい。寒からぬ程に」

「食膳は」

「魚類は、あがりませぬゆえ、その他は、世の常並に」

「あの瓶の挿梅は、そちが致したか。ゆかしい心入れに思う」

「恐れ入りまする」

「義朝どのの御曹子」

と、こんどは、頼朝へ向ってやさしく、

「おん身、幼いに似ず、よく供養なさるのう。亡き父殿が恋しいか」

「恋しゅうござります」

「死んだら会える。そう思うておられるか。死んで父殿に会いたいと念じられるか」

「そう思いませぬ」

「どう思う?」

「死ぬのは怖うござります。死ぬほど、恐ろしい事はありませぬ」

「でも、おん身は合戦に出たであろが」

「戦の時は、ただ夢中でしたから……」

「生きたら、どうありたいと思うか」

「清涼寺へお弟子入りしたいとぞんじます。