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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,082 characters · 257 screens
銭形平次捕物控
【第一回】
一
【第一回】
一
「親分、ありゃ何んです」
観音様にお詣りした帰り、雷門へ出ると、人混みの中に大変な騒ぎが始まって居りました。眼の早い八五郎は、早くもそれを見付けて、尻を端折りかけるのです。
「待ちなよ、八、喧嘩か泥棒か喰い逃げか、それとも敵討ちか、見当もつかねえうちに飛込んじゃ、恥を掻くぜ」
平次は若駒のようにはやり切った八五郎を押えて、兎にも角にも群衆をかきわけました。
「はいよ、御免よ」
などと、八五郎は声を張りますが、場所が場所なり日和もよし、物好きでハチ切れそうになって居る江戸の野次馬は、事件を十重二十重に囲んで、八五郎の蛮声でも道を開いてはくれません。
その間に誰が気が付いたものか、
「銭形の親分だよ、道を開けなきゃ――」
などと言うものがあり、やがて道は真二つに割れます。
群衆の中に、居疎んだのは二人の若い男女、男の方は三十前後の町人風で、女の方は十八、九の旅姿の娘、これは非凡の美しさですが、何処か怪我をした様子で、身動きもならず崩折れましたが、それを介抱している男の方も、額口を割られて、潮時のせいか、鮮血が顔半分を染めて居ります。
「どうしたんだえ、これは?」