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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,082 characters · 257 screens
平次の企画の馬鹿々々しさに、八五郎は眼を丸くしました。
「縄を誰が切ったか、そんなことでもやって見たらわかるだろうという思い付きさ」
「やって見ましょう」
「ちょいと待ってくれ、八、この剃刀は松の枝に引っ掛って居たと言ったな」
平次は掘っ立て尻になる八五郎を呼び留めました。
「ヘェ、驚きましたよ。そいつが頭の上に落ちた時は、もう少しで鼻の頭を削がれるところでしたよ」
「水際から何間位離れて居た」
「一間そこ/\でしょうね、潜戸の内だから」
「すると、落ちた櫓の尖端からは、二、三間は離れて居たわけだな」
「そんなことになるでしょうね」
縄を切って水に落したのは、剃刀の引っ掛って居た松の枝から、二間も離れて居るということに、何やら重大な謎が潜んでいそうです。
八五郎と別れた平次は、店に居る養子の品吉を、隣の小部屋に誘い入れ、近々と膝を突き合せて、折入った調子で始めました。
「さて、これだけの騒ぎは、弾みや過ちで起ったわけじゃない」
「――」
品吉は少しばかりけげんな顔になって、ジッと平次の口許を見つめます。「鬼の面」とはまことによく言った形容で、この逞しい悪相と言ってもよいほどの、大きな道具から発散する、精力的なものを浴せられると、平次ほどの者も、いささかたじろがないわけには行きません。