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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,082 characters · 257 screens
脂切ったセピア色の皮膚、大きいギラギラする眼、どっしりと胡座をかいた鼻、への字に結んだ唇、それはまさに絵に描いた怪物の相好です。
「ところが、よく調べて見ると、あの水の上に突出した桟敷の尖端の方の、縄が十ヶ所ばかり切ってあったのだ」
「矢張りそうでしたか、私もそんな事では無いかと思いましたよ、鳶頭の藤次郎は念入な男で、ヤワな仕事をする人間じゃございません」
品吉の表情は一瞬激しく動きましたが、やがて元の静けさに還って、こう言い切るのでした。
「その縄を切ったのは、この剃刀だが――」
平次は懐中紙の間に挟んであった、剃刀を、品吉の前に突き出しました。
「それは私の剃刀ですが、何処にありました?」
品吉はさすがにギョッとした様子です。
「庭の松の枝に引っ掛って居たというよ、八五郎の頭の上へ落ちて来て、危なくあの長い顎を削がれるところさ」
平次はこんな緊張事にも、つまらぬ作を入れて、一人ニヤリとするのです。
「危ないことで」
品吉は世間並に挨拶をしましたが、よほど驚いている様子は隠せません。
「この剃刀がお前のだとなると、厄介なことになるが」
平次は気を引いて見ます。