Japanische Klassiker mit Furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
だから泥舟は黙然――
「ふうむ、そうかな。道理で、自分でも少しこの頃は、槍がうごくようになったと覚える」
としか云わなかった。
けれど彼は遂に語らずにいられなかった。兄静山に対する切々な思慕は老いてまでも胸の埋め火となっていた。晩年、彼は多くの詩をつくり和歌随筆などを物しているが、その一著「泥舟遺言」のうちに、以上の事は彼自ら記していることなのである。
古来よく伝えらるる「夢想の剣」なるものがある。人間の心情と一念の凝るところに往々理外の理なる神示、霊感、夢想などがあった。奇蹟はこれを解き得れば奇蹟でも何でもないのである。剣では男谷下総守、槍では高橋と並び称されて、幕末の剣雄中に、彼の槍法が断然異彩をもって他の追随をゆるさなかったのも、実に、彼自身が正直に「泥舟遺言」に云っている如く、夢中の掴得であり、一苦悩期を脱殻した日からであった。
だが、凡夢は常に枕を襲うが、神夢はただ枕辺には下りて来ない。ましてや苦悩の殻は、鶏が孵るがごとく、自りでには割れない。
力である。悩み、迷い、愛、熱、どんな力でもよい。神に徹るまでの力であればよい。