Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
三
「せめて、お城の内で、死なせてくださいませ」
と、自身の懐剣をさぐった。
忠興は、それを奪り上げて、いたたまれないように、廊下へ交わした。彼女の供をして三戸野山へ夜のうちに落ちようとする付人達は、山仕度で庭の近くまで、その山駕を用意して来ていたが凝然と、ただ立ちすくんでいた。
「山へは行きません」
「行けっ」
「いやです」
迦羅奢の声音は、次第に強いものに変って来た。忠興は、自分の愛が、彼女に履きちがえられたかと、残念そうに唇をふるわせた。
「……参りません。おいいつけに反くには似ておりまするが」
迦羅奢はもう泣いていなかった。死ぬ刃も持たないので、それに悶掻こうともしなかった。黒髪をなでて、宵闇となった室の中に、きちんと坐っていた。
忠興は、考え直して、
「兵助、小左衛門。後ほどのことといたそう。いちど退がって、休息しておれ」
と、庭の者を退けた。
四
「誰も来てはならない」
と、忠興は、侍女や家臣にかたく云って、灯もない室に、妻と、長いあいだ対坐していた。
諄々と、彼は妻にいいきかせた。
父の藤孝は、もう剃髪して、信長公の死を弔い、光秀討伐の陣頭に立つ悲壮な覚悟を極めておいでになる――