Japanische Klassiker mit Furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
八
権力の下ではしかたがないと、泣き寝入りにしている人もあるというが、秀吉のわるさや、好奇心では、内々いろんな噂がある。忠興は、それをよく知っている。――で、非常に惧れているらしかった。いわゆる家の垣を、猿にでも窺われてはと警戒を怠らないのであった。
そう知ってから、彼女は、一しお身を慎んだ。それでもなお、良人の疑いを受けることがままあった。貞操のことでは彼女も色をなして云わないでいられない場合もある。夫妻の争いと他人には聞えたであろう。――しかし真相はいつも、忠興の愛する余りに原因があった。また、彼女も良人の熱愛に負けない愛に燃やされるところから起る現象であった。――於霜だけがいつもそれを微笑みながら側でながめていた。
九
――そうした強い良人の愛と、五人の子女の教育と、また、多くの家臣や、うるさい世評の中に生きて来たこの十幾年のうちに、彼女は、いつのまにか、誰にも云わないものを、そっと心に持っていた。
心の支えなくしては、生きとおしては来られなかったのである。年月はたっても、何かにつけ、意地わるい世間は、
「叛逆者の娘――」
と、いう眼ざしを、容易には、忘れ去らない。