Japanische Klassiker mit Furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
十二
と、玄関のあたりで、返辞が聞えた。そして間もなく、
「お待たせいたしました」
と、妹の幹子に援けられながら、雪の中へ歩いて来た。肩を丸くつつんでいる簑の厚さにも、雪の冷えを胎児に及ぼすまいとする心づかいが見えていた。
三
城の近くまで来ると、下馬橋の濠外に、一小隊の兵が迎えに出ていてくれた。
白鷺の群れのように、婦人たちの一隊は、鎮台の山にかくれた。
城内の一廓には、彼女たち以外の婦人や将士の家族もたくさん引揚げて来ていた。広い床に莚をしいて雑居していた。
「これからは、お城中が一家族ですね」
「たいへんな大世帯ですこと。どうぞよろしゅうお指図くださいませ」
何か冗談のようでさえあった。お互いに心を明るくするように努めているのかも知れない。和やかな笑いが急に増した。
「ここは陽気でいい。女子たちのほうが元気じゃないか」
大きな声が室外にひびいた。振向くと、司令官の谷干城少将が、参謀の児玉源太郎少佐、樺山資紀中佐など幕僚五、六名といっしょに、廊下に立っていた。
聯隊長の与倉中佐も後ろにいた。大勢の婦人たちの中に、中佐の眼はすぐ妊娠している妻のすがたを見出していたらしかったが、気づかない顔していた。