Japanische Klassiker mit Furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
十一
子息の東涯は、酒杯をほして、虹を吐くように高吟した。
母子年高ク九十強
無憂無病又無傷
老来ノ孝思誰カ能ク識ラン
膝下猶呼ンデ小郎トナス
老母は、それにも寂然としていた。風を聴く老松のようだった。千秋は、自作の国風を朗詠し、風流な十内も、近ごろ覚えたという上方唄などを歌った。
興も酔も、ほどよく座を繞った頃、奥の老母の部屋から、琴の音が流れて来た。人々は一様に、酒杯をおいて聴き惚れた。ここにいる内輪の人々には、誰にもすぐ琴の主がわかっていた。宵から人知れず台所へ手伝いに見えていた千秋の娘のお稲にちがいない――と。
「みな様へ、この媼から、おねがいがあるが」
九十一の媼が、初めて呟くように、云い出したので、何事かと、客の眼はみな、その唇元へそそがれた。
「あの娘がいとしい、可憐らしい。これへ招いて、幸右衛門から杯などやって欲しい。十内どの、どうであろう。千秋様、思し召は、どうお座りましょうの」
すると、座にいた幸右衛門は、顔を真っ赤にして、
「おばば様、御無用ですっ、なまじ、相見て別れるより、私は琴の音を聞いたのみで心が満たされている。おそらくあの人もそうでしょう。