Japanische Klassiker mit Furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
二
この兄の現影を、狐狸のしわざと疑うもむりではない。しかし、理外の理のあるをそちは知るまい。死後生あり、生後死あり、人間の一魂は、生々死々輪輾して極まりのないものなのだ。もし此方が狐狸の性ならば、お前の鉾先に当るべくもない。そちもよもや変化に劣るが如き脆弱な腕は持つまい。いざ、試合おうっ。――試みに当って参るがよい」
静山は、そういうと、音もなく、道場の方へ足を運んでゆく様子であった。
七
「……おのれっ」
泥舟は、夢中で刎起きていた。
そして道場へ躍り立った。
沍寒の大床は氷を張つめたようである。泥舟はりゅうと一颯氷気を裂いて相手の影へ迫った。
――うむッ。
巌の揺ぐような呼吸が泥舟を圧した。はっと繰引けば、かえって相手の槍こそ泥舟の胸いたへ真一文字に来ていたのである。だ、だ、だッと踵を鳴らして踏み止まる。爛と眸の霞を払って敵を見澄ます。
「……ああ、兄だっ。兄上だっ」
もう泥舟は疑わなかった。兄静山に非ざれば見得ない長槍の神技の構えを、彼は幾年ぶりかでその眼に見ていたのである。
――と憶うた瞬間である。泥舟はいきなり横顔を持って行かれたような痺れを覚えた。