Japanische Klassiker mit Furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
八
「ム。なるほど」
一刀斎はうごかない。
池野内蔵八は、自ら云うところの、地摺の青眼を構えて、するすると、粘りつくように一刀斎へ迫って来たが、どうしたのか、ぎゃっというと、三足四足、前へよろめいたままどすと重い地ひびきを最後に息絶えてしまった。
一刀斎の右の袂のうしろに、刀の切っ先が血しずくを静かに落していた。死骸をしばらく凝視していたが、刀を拭って振向くと、
「善鬼。参ろうよ」
と、実に、馬のわらじに躓いたほどな顔色もうごかさずに行ってしまった。
「…………」
典膳は見恍れていた。この朝から彼はまた青年の憂悶を深くした。
四
「お腰でもすこしお揉みしましょうか」
と、母の側へ寄った或る夜のことである。
「典膳。そなたほど腑がいないものはないぞよ」
と、案外な母のことばだった。
母はいつになくきつい容をその姿に持って云う。
「そなたも二十歳を一つこえたではないか。いまをどんな時勢じゃと思います。可惜、若い者が、老い先知れた老母の腰をなでさすっていることなどが、時の若者の一番よい道と心得ていなさるか。――としたら、この母は、悲しゅう思う。そなたは、母に早く死ねと望むか」