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Japanische Klassiker mit Furigana

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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme

Aozora Bunko

わすれもしないこの年は天正四年で、実にこのときに国主北畠具教も討死して終ったのであった。

――戦に出たい。

と母にせがんだことも覚えている。しかし、彼はその母と共に、伊勢湾から東国へ行く便船に乗って、荷物の間から燃える故郷をながめていたのだった。津、松坂などの町々はもちろん伊勢は部落の方まで一円に黒煙をあげていた。

この房州へ移って来たのは、つまりはその戦争が動機であった。上総夷隅郷の万喜頼春は里見一族の武将であるが、その家人のうちに小野朴翁という老人がある。

(このお方が、そなたのお祖父さまですよ)

と、母にいわれながら、初めて白髯の人の前に坐ったとき、典膳は、何かふしぎなここちがした。

母の父親、という感じだけでなく、自分の血液が、思いがけないところから岐れ流れて今のわが身というものに育ちかけている相を、何か眼で見たような気がしたのである。

故郷の土から離れて、母方の血の故郷へ帰ったのだ。神子上典膳は、そんなふうな生い立ちを経て、房州の一海辺に、いつか二十歳をかぞえる若者になっていた。

「もう一ぺん、伊勢へ」

この念はやまなかった。伊勢にはまだ戦争がある気がする。