Japanische Klassiker mit Furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
五
「よくもそうして体が片輪にもならずに済んだな」
「いまは、恥かしさに、一刀斎どのの前へ、ふたたび出る面もありません。いちどは、ここで腹切って死なんかとも思いましたが、それも世間のもの笑い。かつは、故郷に私の人となる日を待っているただ一人の母もあります。……とつこうつ、垣の外をさまよっているうちに、あなたのお姿を見かけ、羨ましさに耐えなくなりました」
「なにがそんなに、俺の身分がうらやましいか」
「良い師のおそばに仕えておいでになることが」
「冗談をいうな。あんな気むずかしい爺さんはない。だが、せっかく十年もこの道にはいって、水を担ぎ薪を割り、夜は夜で、足腰を揉むなど、ずいぶん辛抱して来たのに、奥印可も貰わないで離れては、そのあいだの勤めは水の泡というものなんで、もう一年か、もう二年かと、じっと、我慢をしているところだ。武芸者の弟子なんて、おまえの考えているようなものじゃあねえ」
「勿体ないことです。およそ人の一生にも会い難きものは、良師と良主であると申しまする。……どうか、この私を、あらためてあなたの師、伊藤弥五郎先生へおひきあわせ下さいまし。過去一切の迷夢と思い上がりを捨て、新たに、もういちど剣の初歩から学ぶ七歳の童子のむかしに帰って、一刀斎先生にお仕えいたしたいのです」