Japanische Klassiker mit Furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
三
「典膳、勝ったりっ。そのまま、瓶を割る気で、真二つにしてしまえっ」
ことばのうちに、典膳は、ふところを開けて、大上段にふりかぶっていた。この際、善鬼としては、つけ入る虚があったはずだが、一刀斎の声に驚いて、感情を掻きみだされ、機を失っていたせつな、殆ど、無造作といってよい程、自らの噴血の中に、二言ともいわず、幹竹割に斬り伏せられていた。
「…………」
むしろ茫然たる姿は、ただ一刀に彼を斬った神子上典膳の姿だった。
切ッ先下がりに、精いっぱい、相手を両断したままの姿を――その刀、その構え、その足までを、少しも崩すことなく、いつまでもじっと、そのままに、思考していた。
自分にないとしていた力が自分から出たのである。それは、はからずも画けた神品の名画に似ている。どうして画けたか、よく自分に意識づけて一つの悟入としておかないことには、平常に回って、ふたたびこの神品が画けるか否か、自分のものでも、自信することができないだろう。
典膳は正しく、自己の剣に、陶酔したのだと云ってよい。涙がにじみ出てならなかった。今日以後、一箇の剣人たることを、天地からゆるされたかのような心地である。