Japanische Klassiker mit Furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
四
「……止めを刺せ」
うしろから、一刀斎に云われるまで、典膳の四肢は、土から生えたようになっていた。しかし、敢なき兄弟子のすがたを見ると、止めまでは刺し得なかった。善鬼はなお手足をぴくぴくさせているのだ。どうしても忍び難い。
「わしに貸せ」
と、一刀斎は、典膳の刀を取った。典膳は鞘ぐるみ、師の手にあずけた。一刀斎は、断末の善鬼をしげしげとながめて、
「不愍なれど、かくなり果つるように、所詮は、生れついておる男じゃった。助かるべくもない深傷、せめてこう致してやるが師の慈悲よ」
と、刀の切っ先をもって、一抉り与え、さて、典膳に向っては、
「忘るるなよ、典膳。いかなる上手になろうとも、善鬼の如く慢じては、その終り、かならずかくの如きものじゃ。思えばわしも一代に大きな過失を一つした。それは、習ぶべからざる質の者に、わが剣法を習ばせたことじゃ。豈、善鬼の罪とのみいえようや。――善鬼よ、ゆるせ」
一刀斎は、左の手で、白髪まじりの髻の根をつかんだ。そして右手の刃で、ぷつと断り、善鬼の胸のうえに投げた。
そしてその刀は、自分の腰に収め、自分の腰にさしていた刀を取って、典膳に与えた。