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Japanische Klassiker mit Furigana

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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme

Aozora Bunko

十四

「弁蔵、用事があったら呼ぶから、小使室へ退がっておれ」

「……はい。はい」

弁蔵はすぐ室外へ出て行った。けれど小使室には戻らないで、まだ粉雪の舞っている闇の夜空をながめていた。そしてしばらくは参謀室のほうに心をひかれているふうだったが、突然、厩の手綱を断った悍馬のように、鎮台の丘から下へ向って駈け出した。

六

小使室を借りて、手足を洗ったり、軍服に着更えたりしていた岡本軍曹は、さっきから弁蔵爺やの挙動に不審を抱いて、司令部の横に佇んで、彼の様子を監視していた。

岡本軍曹も、日頃ならそんな心はうごかなかったかもしれないが、自分自身がおとといから敵地にはいって、密偵の重任を果し、九死に一生を拾って帰って来たばかりの昂奮がまだどこかにあったので、弁蔵爺やの行動にも、すぐ同じことが考えられた。

「あっ、変だぞ」

呟くと、崖の際まで駈けて、木の間から見送っていた。

爺やの影は、老人とも思われないほど、精悍でまた迅かった。壮年の頃から長年、馬の後前について駈けた脛の面影がある。しかし、その敏捷さは、岡本軍曹の疑いによけい自信を抱かせた。

軍曹は咄嗟に、

「彼奴。敵へ何か漏らしに行ったな!」