Japanische Klassiker mit Furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
却って、そんな私事が、良人の耳にはいっては、すこしでも、賊軍に当る勇気を怯ませはしないかとぞんじまして」
「そんな思い過しを遊ばしていらっしゃいましたか。ホホホ、ではほんとうのことを申しあげますと、樺山参謀どのが、お宅さまの御主人へ、陣地の防戦は、一刻交代していてやるから、生れた嬰児の顔を、ちょっと一目、見て来ないかと、おすすめになられたところが、ばかを云い給えと、反対にひどく叱られたと、仰っしゃっておいでになりました。それほどな御主人さまの御意気ですのに、何で」
――その時、扉の外へ、何かぶつかって来たような大きな音がした。産衣につつまれている赤い小さい顔は衝動をうけて突然泣きだした。
「誰ですかっ? ……。ここには、産婦がいらっしゃいますから、静かにしてください」
玖満子夫人が、扉へ向ってたしなめると、その外で、
「お、奥さま。弁蔵でございます。ちょっと、ちょっと、ここへお顔を……」
「えっ、爺やですって?」
別の病棟に入院している老小使の弁蔵が、何しに、患者のくせに、あわただしく来たのか。玖満子はあやしみながら、ひとり扉の外へ出て行った。
十一
まだよく歩けもしないくせに、杖なしで、廊下を転げまろんで来たので、扉へぶつかると、弁蔵は坐ったきりになってしまった。